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教育の職人のぶさんの、国語教育とカウンセリング(公認心理師)、グループワークとキャリア教育、長年鍛えた職人技をお目にかけます。
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第8段落。ロシア行き。

豊太郎は通訳の仕事がよほど楽しかったのだろう。
正直に書いている。
エリスからの手紙が来るから、エリスを忘れることができなかった。
ということは、手紙が来なかったら忘れていたんかい!(とツッコミが入る)

そしてその手紙の「大臣に重くもちいられたらなら」という部分で初めて自分の立場を知る。
神に誓って、翻訳の仕事と出世を結びつけていなかったという豊太郎の言葉は信じてやろう。
それにしても、なんて迂闊な奴なんだろう。
本当に学問大好き人間なんだなぁ。

大臣の信用を得た理由は、勿論、語学の才能もあるが、
大臣がエリスと別れたと思っているから。
政治家は女性スキャンダルを最も嫌うのは今も昔も同じ。
どうする?豊太郎。
どうする?一緒に日本に行けると夢見る少女。

授業の詳細は、http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/maihime03.htm
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ようやく第8段落。こんなゆっくりやっている学校ってある?

翻訳を一晩で仕上げた豊太郎。
大臣の信用を得て……という相沢の言葉より、仕事が面白くてたまらなかったのだろう。
新聞の雑文ではなく、正式の文章、豊太郎の学問の血が騒ぐ。

大臣は大満足。初めは用事だけだったが、意見を問うたり、冗談を言ったり。
すっかり豊太郎が気に入った様子。
しかし、悲しいことに世事に鈍感な豊太郎。
翻訳の仕事しか眼中にない。

そして、突然ロシア行きの打診。
本当なら、少し時間をもらうはずだが、即決する豊太郎。
しかも、「いかで命に従はざらん」と反語できっぱりと。
これもまた「弱き心」から出た。
これが出世に結びつくとも、しばらくエリスと離れて暮らすことにあるとも、考えないで。

授業の詳細は、http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/maihime03.htm
 
第7段落のラスト。

欧羅巴という大洋で、
免官になった豊太郎。
大臣の信用を得て出世するという、相沢が示してくれたはるかなる山。
果たしてそこに行き着くか?
行き着いても満足できるのか?
不確定要素が多すぎる。
それに比べると、今の貧しいながらも楽しい生活、
捨て難いエリスの愛は、目の前にある確かなもの。

それなのに豊太郎は、エリスと別れると相沢に約束する。
それは、友の言葉に逆らえない「弱き心」から出たもの。
エリスと付き合ったのも「弱き心」なら、
エリスと別れると約束したのも「弱き心」。
相沢は、豊太郎の「弱き心」を知り尽くして忠告をした。
さすが計算づく。しかし、この計算が「弱き心」でやがて崩され、相沢も窮地に。

ホテルを出る豊太郎の心の中には、エリスを裏切ったという一種の寒さを感じる。
豊太郎は帰ってエリスに別れようと言う気はない。
出世は濃い霧の向こうのはるかかなた。
まぁ、なんとかなるだろう。
豊太郎の得意技、「先延ばし」である。
このツケは豊太郎に返ってくるのだろうか。
それとも………。

授業の詳細は、http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/maihime03.htm

第7段落。エリスと別れろと迫る相沢。

問題の場面です。
豊太郎を昼食に誘った相沢。
一方的な質問責め。確かに波瀾万丈の豊太郎の話は面白い。
それを非難もせず聞いていたのには権謀術数があった。

この一段のこと、つまりエリスとの関係は豊太郎の弱い心から出たことなので仕方がない。とサラッと言い切る。
本人にしてからが25歳でようやく気づいた本性を、相沢は見抜いていた。
大学時代、日本一の優等生豊太郎を見ながら、こいつは勉強はできるが、受動的・器械的なやつだ。
優柔不断で、いざというときに決断できない奴だと見抜いていた。
そこまで理解してくれるとは、「親友」と言うべきでしょう。

一方的に話を聞いていた相沢が、一転して攻勢に出て、2つの忠告をする。

1つは、語学の才能を示して大臣の信用を得ること。
それは、豊太郎の学識や才能を惜しんだから。個人的な問題ではなく、国家が大金をつぎ込んで勉強させたのだから、いうなれば国家の損失になる。
しかし、それなら、そんな回りくどいことをせずに、直接大臣に推挙すればいい。
そこが、相沢の相沢たる所以。
大臣は、豊太郎が女で首になったことを知っている。
今は、豊太郎の語学の力だけを利用しようとしている。
なのに、親友だからという理由で豊太郎を推挙すれば、大臣は相沢をどう思うか。
国家の仕事に私情を持ち込む奴だ。信用できない。
それに、万一豊太郎がミスをすれば、相沢の連帯責任になる。
相沢ははっきり言っている。「己に損あればなり」。
立派だ。さすが相沢、官僚の鏡。
友情より保身を優先する。当然だ。
豊太郎のように甘い人間ではない。

もう1つは、エリスと別れること。
身分の差は、いずれ出世した時にスキャンダルになる。
それに、弱い心の豊太郎は、おそらくエリスに泣きつかれたら出世より愛をとるだろう。
相沢は、先の先まで見通していたのだ。
親友の名に恥じない深謀遠慮である。

授業の詳細は、http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/maihime03.htm

授業再開。第7段落、相沢に会う場面。

学習プリントを使って、基本的な読解。
読みの確認、意味の確認、音読、舞姫チェック、訳しながらチェックの解答解説。

ここからは、豊太郎の心のバロメーターに注意。
針が、愛に振れるのか、出世に振れるのか。

相沢に再会する前の、豊太郎の羞恥心。
「羞恥心」は「山月記」や「こころ」でもキーワードでした。
しかし、豊太郎の場合は前面には出て来ない。
羞恥心は自尊心の裏返し。
強い自信や信念の発露である。

幸か不幸か、豊太郎は優柔不断。
自分は虎や自殺しなかったものの、
エリスを発狂させてしまう。
確固たる信念は自分を滅ぼす。
優柔不断さは相手を滅ぼす。

授業の詳細は、http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/kokugo/maihime03.htm
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